2015.09.11

自由な研究活動と単位化された授業の間(1)

執筆者:園田茂人教授(東洋文化研究所&東京大学大学院情報学環・学際情報学府)

 国際総合日本学も、いろいろなイベントを行うようになり、学内外で行われている研究活動情報も、限りはあるものの、相当に広く周知できるようになっている。他方で、単位化された授業群も、基幹科目、展開科目とも整備され、研究と教育の両輪が出来上がりつつある。プリンストン大学やシカゴ大学などとの大学間連携も構築されつつあり、共同セミナーや共同ワークショップ、合同サマープログラムなどの試みも始まっている。2012年、国際本部内に「国際総合日本研究専門部会」が設立された当時とは大違いだ。
 周囲の目も、少しずつではあるが、変化している。
 すでに紹介したように、平成26年度に採択されたスーパーグローバル大学創生支援事業では、本学の提案に対して「英語で『日本』について学べる『国際総合日本学』が開設されることは評価できる」とコメントされるなど、高い評価を受けている。一部海外の大学からは、学生の受け入れや出張授業の展開など、日本研究をめぐる具体的な協力関係の要請をもされるようになった。
 もっとも、こうしたプログラムの成長は、いくつか矛盾を生み出しつつある。そのうちの一つが、活発化する研究活動の情報が、単位化された授業科目の履修学生になかなか届かないといった点だ。
 国際連携が進み、研究集会が増えても、これに参加する/したいと考える人間が増えなければ、個々の研究集会が限りあるオーディエンスを「奪い合う」ことになる。同じ時間帯に複数のイベントが開かれることになれば、意義深い集会もオーディエンスを得ることが難しくなってしまう。研究活動の情報をより多くの人に届け、参加したくなるようなインセンティブ構造を作り上げないことには、「豊作貧乏」に近い状況が生まれかねない。
 他方で、単位化された授業に参加している学生には、「もっと多様な授業を展開してほしい」というニーズが継続的に存在している。基幹科目、選択科目とも整備されているとはいえ、選択科目を増やすには講師謝金の確保など多くの資源制約条件があり、学生のニーズを満たすには至っていない。全学交換留学の仕事をしてよくわかったが、本学にやってくる交換留学生の日本への関心は多岐にわたっている。ところが授業を提供してくださる部局では、講師謝金をねん出するのがむずかしいといった切羽詰まった状況がある。
 活発化しつつある自由な研究活動と、制約条件が多い中での単位化された授業の間の「矛盾」。私たちは、この「矛盾」の解消に向けた取り組みを始めなければならない。では、何をしないといけないか。次回は、その方策について私見を述べてみたい。